今年も行ってきました。PMI日本フォーラム。
受講したセッションの所感を簡単にまとめておく。
(全セッション書くのではなく、印象に残った・気付きのあったセッションのみ)
情報サービス産業協会会長 横塚 裕志氏
「デジタルビジネス時代」が到来し、旧来のビジネスに影響が出始めている。
そんな中でビジネスパーソンは何を考えなければならないか? という話。
これからは、モノの性能・品質を上げるよりも、顧客に「価値」を提供する時代。そんな世の中で、客は何に価値を感じるか? というお題に対して、以下の3つが紹介された。
ここでいうデザインとは、
製品やサービスの問題点を見つけて改善する、という時代は終わり、顧客に価値を提供する方法をデザインすることが必要。
旧来のSWOT分析などをしても、顧客が「いいね」と言ってくれなければ意味が無いのだ。
そのためには、最近話題の「デザインシンキング」が必須であるという。
例えば洗濯機。洗濯機という道具を「製品」観点で改善してもダメで、洗濯している人を観察して、ユーザーは本当は何に困っているのかを見つけ、その解決策を考える。こういう発想に転換しなければならない、と。
また、日本企業の事業計画の在り方にも踏み込む。
一般的な日本企業は、年間予算計画によって1年間の行動が縛られており、これでは変化の激しい時代に対応できないという。
これは、結構な数の企業が気づいているはず。今やビジネスにはスピード感が欠かせないのは皆が百も承知。しかしながら、旧来の手法を抜本的に変えるのはなかなか難しいと思う。(そうとばかり言ってられないのだが…)。
最後の締めでは、ワークライフバランス的な話も。
長時間労働をうさぎ跳びになぞらえ、「辛いだけで全く意味が無い」とバッサリ。
長時間労働から良い物は生まれない。楽しい物をデザインして、楽しく仕事しましょう、と。
デザインシンキングの具体的な方法論までには踏み込んでいなかったが、デザインシンキングが何なのかを知らなかった人には、よい気づきが得られる内容だったのではなかろうか。
かくいう私も、ぜんぜん実践してないのだけど…。「やってみようかな」という気にさせられるセッションだった。
三菱電機株式会社 鎌倉製作所 宇宙システム第一部 HTV量産プロジェクトマネージャ 桐谷 浩太郎氏
こうのとり(HTV)は、ISSに物資を輸送するための無人宇宙船である。これの量産プロジェクトの紹介。
9号機まで予定されていて、これまでに5号機までがミッションを終了している。6号機(HTV6)は今年度中に打ち上げ予定。
まずは、こうのとりの構造や、ISSとランデブーするための仕掛けの紹介。
ISSと同じ軌道を飛んでいると、スピードが同じになりいつまでも追いつけないので、ISSよりも内側の軌道を通り、追いついてから高度を上げてISSに接近する仕組みになっている。これを自律的にコントロールする機能を備えている、と。なるほど。
裏話。HTV4から搭載した表面電位センサー"ATOTIE-mini"は、太陽電池パネルの「跡地」という意味のネーミングだそうで。
HTV6に搭載されたKITEは、デブリ回収システムの実証実験装置。ローレンツ力を計測したりするのだそう。ローレンツ力を使ってデブリを大気圏に落とす仕組みらしい?
こうのとりのプロジェクトは、「量産」と「プロジェクト」の2面性を持っていること、また、プロジェクトとしても全体プロジェクトと各号機プロジェクトの二重構造を持っている、とのお話。
法人スポンサー・人材育成SG 宮島 賢悟氏、利根 章氏
PMCDFの紹介と、日本支部におけるPMCDF研究成果の発表。
PMCDFとは Project Management Competency Development Framework(プロジェクト・マネジャー・コンピテンシー開発体系)の略。
内容をここに詳しくは書かないが、PMCDFは未読だったのでぜひ読もうと思い、帰りの新幹線の中で早速ポチってしまった(PMIのサイトから通販で買える)。
PMには「熱い思い」が必要だ、というメッセージが印象的。実は、これはさらに「あついおもい」のあいうえお作文になっている。ここだけ引用させてもらう。
【あ】相手の話を傾聴し、人を見て説け!
【つ】強い意志と信念で、メンバーを動機付け、プロジェクトを牽引せよ!
【い】いいチーム作りと共に、段取りと仕切りを考えてマネジメントせよ!
【お】おおきな視野を持ち、問題の本質を捉えよ!
【も】もっとも適切な方法を選択せよ!
【い】一流なら、倫理的行動規範に従い、責務をまっとうせよ!
株式会社リコー 理事 除村 健俊氏
講演内容はリコーが御殿場に作った環境事業開発センターの立ち上げ苦労話と施設紹介。
話の中で印象的だった箇所を書き残しておく。
講演者は、PMにとって大切なのは、プロジェクトの初期にどれだけコンセプトを作り上げられるか。また、いかに熱い思いをもったチームを作れるか、であるという。これは間違いない。PMをはじめとするリーダーが方向性を明確に示さないと、メンバーはどっちを向いて走ればよいか分からなくなるので。
また、企業において、機能別組織が完成しプロセスも完成すると、仕様書通りにモノを作ることに専念しがちで、組織間で責任の押し付け合いが始まるという。これは大企業のリコーの中の人らしいご意見。私の所属する会社もそうだし。
私の心に刺さったのは、次に続いた言葉。機能別組織を作るというのは効率を上げるということだが、効率を上げると人間の能力を下げてしまうという弊害も出る、という。「余る人」が出て、人を二極化することに繋がる、と(組織の中で生き残れる人、残れない人)。
これは全く同意。私の会社も、「作業の標準化」とか「効率化」とかよく言うんだけど、標準化された作業をこなすだけの日々になってしまうと人の成長は止まってしまう。また、そこに価値は生まれない。だって、うちの会社で標準化できるような作業は、他社も同じことできると思うんですよね。そこに差別化は生まれない。
何も標準化・効率化が悪いと言いたいわけではなくて、一度標準化したからといってそれで満足するな、というのが私の意見。標準化・効率化に成功したあとも、更なる効率化を考えたり、新しい物を考えたり、といったクリエイティブな活動を続ける必要がある。しかも、それをやるのが一部の人だけではダメで、組織全体で取り組むような形に持って行きたい。
それを実現するために、如何に組織を活性化するか? を考えなければならない。
近鉄不動産株式会社 アセット事業本部 ハルカス運営部 運営部長 中之坊 健介氏
ハルカスの計画から建築中のエピソード紹介。
どちらかというと計画段階の話が中心。
関西人らしく、話が脇道に逸れたタイミングで聴衆のウケをとっていた。
いくつか紹介。
慶應義塾大学大学院SDM教授 前野 隆司氏
前野教授の講演を聞くのは3回めくらいなので、詳細は省略。
「あなたの想い主導型イノベーション」というワードが印象的だった。
イノベーションには、アイデアだけでなく、それを実現に持っていくための気持ちが大切である。
勢いでPMCDFをポチってしまったのは誤算(4,000円!)だが、じっくり読んで人材育成に活用させてもらいます。
受講したセッションの所感を簡単にまとめておく。
(全セッション書くのではなく、印象に残った・気付きのあったセッションのみ)
2日目のエントランスの様子。1日目は雨だったので写真なし。 |
1日目1セッション目
「デジタル時代は破壊とデザイン」情報サービス産業協会会長 横塚 裕志氏
「デジタルビジネス時代」が到来し、旧来のビジネスに影響が出始めている。
そんな中でビジネスパーソンは何を考えなければならないか? という話。
これからは、モノの性能・品質を上げるよりも、顧客に「価値」を提供する時代。そんな世の中で、客は何に価値を感じるか? というお題に対して、以下の3つが紹介された。
- コスト
例えば、フリー戦略。電力をタダにする、など。
例えば、使用量に基づく価格設定。自動車を土日しか使わない顧客には、自動車を通常の7分の2の価格で提供する、など。 - Customer Experience.
使っていて心地よい、楽しい、便利、など。
例えば…
・Uberは、呼ぶ車の車種を選べる。
・3Dプリンターを使って、椅子をパーソナライズする。
・教育のデジタル化。
ただし、教科書をデジタル化するとかプログラミング教育をするとかそういう話ではなく、PCやタブレットを使うことによって教育をパーソナライズするという話。 - プラットフォームの価値
ヤフオク、FinTech、AirBnBなど。
ここでいうデザインとは、
- ビジネスをどうデザインするか
- プロジェクトの進め方をどうデザインするか
製品やサービスの問題点を見つけて改善する、という時代は終わり、顧客に価値を提供する方法をデザインすることが必要。
旧来のSWOT分析などをしても、顧客が「いいね」と言ってくれなければ意味が無いのだ。
そのためには、最近話題の「デザインシンキング」が必須であるという。
例えば洗濯機。洗濯機という道具を「製品」観点で改善してもダメで、洗濯している人を観察して、ユーザーは本当は何に困っているのかを見つけ、その解決策を考える。こういう発想に転換しなければならない、と。
また、日本企業の事業計画の在り方にも踏み込む。
一般的な日本企業は、年間予算計画によって1年間の行動が縛られており、これでは変化の激しい時代に対応できないという。
これは、結構な数の企業が気づいているはず。今やビジネスにはスピード感が欠かせないのは皆が百も承知。しかしながら、旧来の手法を抜本的に変えるのはなかなか難しいと思う。(そうとばかり言ってられないのだが…)。
最後の締めでは、ワークライフバランス的な話も。
長時間労働をうさぎ跳びになぞらえ、「辛いだけで全く意味が無い」とバッサリ。
長時間労働から良い物は生まれない。楽しい物をデザインして、楽しく仕事しましょう、と。
デザインシンキングの具体的な方法論までには踏み込んでいなかったが、デザインシンキングが何なのかを知らなかった人には、よい気づきが得られる内容だったのではなかろうか。
かくいう私も、ぜんぜん実践してないのだけど…。「やってみようかな」という気にさせられるセッションだった。
1日目5セッション目
「宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV) 量産宇宙機のプロジェクトマネジメント」三菱電機株式会社 鎌倉製作所 宇宙システム第一部 HTV量産プロジェクトマネージャ 桐谷 浩太郎氏
こうのとり(HTV)は、ISSに物資を輸送するための無人宇宙船である。これの量産プロジェクトの紹介。
9号機まで予定されていて、これまでに5号機までがミッションを終了している。6号機(HTV6)は今年度中に打ち上げ予定。
まずは、こうのとりの構造や、ISSとランデブーするための仕掛けの紹介。
ISSと同じ軌道を飛んでいると、スピードが同じになりいつまでも追いつけないので、ISSよりも内側の軌道を通り、追いついてから高度を上げてISSに接近する仕組みになっている。これを自律的にコントロールする機能を備えている、と。なるほど。
裏話。HTV4から搭載した表面電位センサー"ATOTIE-mini"は、太陽電池パネルの「跡地」という意味のネーミングだそうで。
HTV6に搭載されたKITEは、デブリ回収システムの実証実験装置。ローレンツ力を計測したりするのだそう。ローレンツ力を使ってデブリを大気圏に落とす仕組みらしい?
こうのとりのプロジェクトは、「量産」と「プロジェクト」の2面性を持っていること、また、プロジェクトとしても全体プロジェクトと各号機プロジェクトの二重構造を持っている、とのお話。
1日目7セッション目
「できるプロジェクト・マネジャーの“人間力“とは」法人スポンサー・人材育成SG 宮島 賢悟氏、利根 章氏
PMCDFの紹介と、日本支部におけるPMCDF研究成果の発表。
PMCDFとは Project Management Competency Development Framework(プロジェクト・マネジャー・コンピテンシー開発体系)の略。
内容をここに詳しくは書かないが、PMCDFは未読だったのでぜひ読もうと思い、帰りの新幹線の中で早速ポチってしまった(PMIのサイトから通販で買える)。
PMには「熱い思い」が必要だ、というメッセージが印象的。実は、これはさらに「あついおもい」のあいうえお作文になっている。ここだけ引用させてもらう。
【あ】相手の話を傾聴し、人を見て説け!
【つ】強い意志と信念で、メンバーを動機付け、プロジェクトを牽引せよ!
【い】いいチーム作りと共に、段取りと仕切りを考えてマネジメントせよ!
【お】おおきな視野を持ち、問題の本質を捉えよ!
【も】もっとも適切な方法を選択せよ!
【い】一流なら、倫理的行動規範に従い、責務をまっとうせよ!
2日目1セッション目
「リコー環境事業開発センターの概要と環境ビジネス創出の取り組み」株式会社リコー 理事 除村 健俊氏
講演内容はリコーが御殿場に作った環境事業開発センターの立ち上げ苦労話と施設紹介。
話の中で印象的だった箇所を書き残しておく。
講演者は、PMにとって大切なのは、プロジェクトの初期にどれだけコンセプトを作り上げられるか。また、いかに熱い思いをもったチームを作れるか、であるという。これは間違いない。PMをはじめとするリーダーが方向性を明確に示さないと、メンバーはどっちを向いて走ればよいか分からなくなるので。
また、企業において、機能別組織が完成しプロセスも完成すると、仕様書通りにモノを作ることに専念しがちで、組織間で責任の押し付け合いが始まるという。これは大企業のリコーの中の人らしいご意見。私の所属する会社もそうだし。
私の心に刺さったのは、次に続いた言葉。機能別組織を作るというのは効率を上げるということだが、効率を上げると人間の能力を下げてしまうという弊害も出る、という。「余る人」が出て、人を二極化することに繋がる、と(組織の中で生き残れる人、残れない人)。
これは全く同意。私の会社も、「作業の標準化」とか「効率化」とかよく言うんだけど、標準化された作業をこなすだけの日々になってしまうと人の成長は止まってしまう。また、そこに価値は生まれない。だって、うちの会社で標準化できるような作業は、他社も同じことできると思うんですよね。そこに差別化は生まれない。
何も標準化・効率化が悪いと言いたいわけではなくて、一度標準化したからといってそれで満足するな、というのが私の意見。標準化・効率化に成功したあとも、更なる効率化を考えたり、新しい物を考えたり、といったクリエイティブな活動を続ける必要がある。しかも、それをやるのが一部の人だけではダメで、組織全体で取り組むような形に持って行きたい。
それを実現するために、如何に組織を活性化するか? を考えなければならない。
2日目4セッション目
「あべのハルカス プロジェクト ~検討開始から完成まで、その先に目指すもの~」近鉄不動産株式会社 アセット事業本部 ハルカス運営部 運営部長 中之坊 健介氏
ハルカスの計画から建築中のエピソード紹介。
どちらかというと計画段階の話が中心。
関西人らしく、話が脇道に逸れたタイミングで聴衆のウケをとっていた。
いくつか紹介。
- ハルカス建設の計画発表時の記者発表では、メディアも好意的に受け止めてくれたが、その2日後の定例記者会見では新聞各社から批判的な質問が殺到したのだそう。特に、先行して中之島に高いビルを立てた某新聞社(朝日のことですね)の記者からは、「阿倍野にこんな高いビル立てて、上から何が見えるんや」と質問された、と。それに対して近鉄の役員がキレて「お前んとこのビルこそ、何が見えるんや」と言い争いになった。
- 安倍首相が視察に訪れた時、橋下市長(当時)と松井府知事もついてきた。
この話が面白かったのだけど、ブログに詳細を書いてしまうと問題ありそうなので割愛。
2日目5セッション目
「イノベーションを起こせる人と組織とは?」慶應義塾大学大学院SDM教授 前野 隆司氏
前野教授の講演を聞くのは3回めくらいなので、詳細は省略。
「あなたの想い主導型イノベーション」というワードが印象的だった。
イノベーションには、アイデアだけでなく、それを実現に持っていくための気持ちが大切である。
まとめ
今回は「PM」というキーワードを忘れることにして、招待講演を中心に受講してみたが、これはこれで良い刺激になった気がする。勢いでPMCDFをポチってしまったのは誤算(4,000円!)だが、じっくり読んで人材育成に活用させてもらいます。